日本文化大学で学べる日本文化は茶道くらいですが、別に日本文化大学は日本文化を目的に名付けられた訳ではありません。厳密には「芸能面における日本文化」ではないということです。精神面における日本文化を伝えるために蜷川親繼は日本文化大学を興したのです。
日本文化の精神面と言えば、やはり『武士道』が一番有名でしょう。私個人は小笠原貞宗が武士の礼節の開祖だと思っていますが、ひとまずは『武士道』を紹介します。
『武士道』は日本文化を象徴する重要な作品と言えます。新渡戸稲造が1900年に英語で執筆したこの著作は、日本の武士道精神を海外に紹介する目的で書かれました。武士道とは、勇気、礼節、誠実、忠誠心、自己犠牲といった価値観からなる倫理体系で、武士が理想とした生き方や精神を表しています。これは単なる戦闘術ではなく、武士が社会的に尊重される人間として成長するための道であり、日本人の価値観や生活にも影響を与えたものです。
新渡戸は西洋文化のキリスト教的倫理観と日本の武士道を比較し、共通点と違いを考察しました。彼の『武士道』は日本の精神文化を理解する窓口となり、日本文化の根底にある価値観を世界に発信する役割を果たしました。こうした背景から、『武士道』は日本文化の一部として多くの人に評価され、現在でも人々に読み継がれ、世界的に日本文化への関心を喚起する作品となっています。日本文化大学もこの精神面は大いに影響を受けていると思われます。
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日本の精神文化を広める上で大きな役割を果たしたものとして、以下のようなものがあります。
- 禅(Zen)
禅は仏教の一派で、特に「心の平静」や「今を生きる」精神が重んじられます。禅の思想や実践方法(座禅など)は、19世紀以降、特にアメリカやヨーロッパで高い関心を集めました。禅のシンプルで深い哲学は、ストレスの多い現代社会でも「精神を落ち着ける方法」として注目されています。また、禅の考え方が西洋の芸術、スポーツ、ビジネス、心理学にも影響を与えています。
- 茶道(茶の湯)
日本文化大学でお馴染みの茶道です。茶道は、単に茶を点てて飲むだけでなく、礼儀作法、自然との調和、そして相手をもてなす「おもてなし」の精神を重んじる芸道です。16世紀に千利休が確立したこの文化は、日常生活の中での静寂、自然美への敬意、感謝の気持ちを反映しており、外国人にもその奥深さが評価されています。茶道を通じた心の静穏や礼儀作法の洗練さは、日本文化の美意識を象徴しています。
- 浮世絵
江戸時代に発展した浮世絵は、日本の風景や庶民の生活、役者、花鳥風月をテーマにしており、ヨーロッパの印象派画家たちに大きな影響を与えました。特に葛飾北斎の「富嶽三十六景」や歌川広重の「東海道五十三次」などの作品は、異国の地で日本美術のシンボルとして広がり、日本の独自の視点や美意識が評価されました。浮世絵を通して日本の自然、風俗、感性が世界に発信され、日本文化の一部として親しまれています。特に浮世絵で描かれた「芸者」は当時のヨーロッパを大いに沸かせました。万博で大人気だったそうです。
- 俳句
俳句は、自然や季節を感じさせる短い詩の形で、松尾芭蕉の「古池や蛙飛び込む水の音」などが有名です。17音の中で自然や人生をシンプルに表現する俳句は、短くも深い情景や感情を表現し、日本の「簡素さの中に美しさを求める」精神文化を象徴します。近年では海外でも俳句が愛され、各国で俳句大会が開かれ、日本文化として広く親しまれています。
- 武道(柔道、剣道、弓道、空手など)
武道は、日本古来の武士の精神に基づき、ただ戦うだけでなく、礼儀や精神的な成長を重んじる点が特徴です。柔道や空手、剣道などは、自己鍛錬や相手への敬意を重要視するため、単なるスポーツとは異なる「精神修養の道」として広まりました。特に柔道から派生したjudoはオリンピック競技にもなっています。ただしjudoは精神面よりも勝敗にこだわる性質があり柔道と扱いを別にしろと私の中で意見が分かれています。
少なくともこれらの武道を通じて「礼を重んじ、強さと共に内面を磨く」日本の価値観が海外にも浸透しているのです。日本文化大学でもこれらの武道を扱う部活動が盛んになっています。
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これらは日本の「和の精神」や「簡素さの中の深さ」といった価値観を体現し、日本の精神文化を広める役割を果たしてきたと言えます。